信州Well-being有識者対談インタビュー Vol.2 中村 大樹さん
今回対談するのはInternational School of Nagano代表栗林と、長野県上田市を拠点に、インターネットによる書籍販売、買取をメイン事業に行なっているVALUE BOOKS代表取締役の中村大樹さんです。対談インタビューでは”地域のWell-being”と”世界水準”のテーマでお話ししていただきます。
栗林:
会社を設立された経緯などを教えてください。
中村さん:
大学を卒業してすぐ個人事業主として始めて、16年目です。
最初は強いビジョンはあまりなくて、自分で起業して食べて行きたいと思い色々模索していました。そんな中で当時日本に上陸して間もなかったAmazon社を見て、今でいうメルカリのような感じで、読み終わった本を出品する、せどりみたいなことを始めました。
それがとにかく楽しくて。
最初はお小遣い稼ぎでしたが、そのうち高校時代の友達を巻き込んで2年後には会社を設立していました。
基本は古本の販売・買取ということをやっていますが、NPOと一緒になって、寄付者から読み終わった書籍、DVDなどを集めて換金し、さまざまな分野で社会的な課題解決をめざす団体(NPO・学校・自治体)に寄付をする「charibon(チャリボン)」と言うサービスの運営も10年ほどやったりしています。
栗林:
NPOとの活動はどんな事がきっかけで始めたんですか
中村さん:
高校時代の先生を通して、立川のNPOの「育て上げネット」さんに知り合いました。その中の方が、企業を巻き込んで社会問題を解決するのがすごく上手な方で、一緒に活動を開始しました。その取り組みが日経新聞に取り上げられて、東京大学の寄付担当の方が見てくださって、大学にモデルを導入してくださったりして。
最初の古本買取の事業をやってる中で、自分たちの仕組みを使って社会課題の解決やより面白いことができないかなっていうので広まっていった活動の1つです。
栗林:
「自分で起業して食べていきたい」という部分から、社会貢献の方へと考えが変わったんですね。
中村さんにはISNでも現在一緒にサステナブルライブラリーのクラウドファンディングに取り組んでいただいてますし、想いが伝わってきます。
そんな中で、中村さんにとって「世界水準」という言葉はどういう意味だと考えますか?
中村さん:
自分たちは国内のお客さんへのサービス提供を主にしていますが、会社の在り方とかでベンチマークしているのは外国の会社が多いです。
よく名前を出すのはPatagoniaさんとか、Better World Booksさんというアメリカの寄付本のプログラムをメインにやっている会社さんで、そういうところは創業の頃からかなりウォッチしていました。
2社は共通して社会環境に配慮した事業に与えられる世界的な証明である「B-Corp」を取得していて、自分たちも社会に対して貢献できる意識を持って、できる限りのことをやろうと思っています。
(※B-Corp(B Corporation)とは、米国の非営利団体B Labによる国際認証制度。厳格な評価のもと、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる。)
栗林:
企業の取り組みや関心が、私たちが生きる社会と環境についてというのは、とても共感できます。
今後、中長期的にはどんな事をして行こうと思っていますか。
中村さん:
今はチャットGPTなどの研究に力を入れています。
今までは検索という手段でしか本と出会えなかったので、その時の自分とピッタリ合う本に出会いにくかったですが、チャットGPTを使う事で可能性が広がったと思います。
例えば、自分の信頼している書店員さんや司書さんとかに悩みを相談して適切な本を探してもらえるように、抽象的な文章を入れたら、それにあった本をAIが提案してくれることができそうだと思って。そういう仕組みのデーター版などを作ったりしています。
ですが、便利なものが出てくると、会社としては生産性が上がったりいいことがありますが、そもそも本を読まなくてよくなったり、人の仕事が無くなっていってしまうという事も起こりつつあって、、、。
それってどうなんだろう。と考える時もあります。
栗林:
便利なシステムによって仕事を失う人が出てくるかもしれない。その一方で、その人達が仕事を無くしたことによって次のステップと言う機会が訪れるきっかけでもあると思うのですが、どう思いますか
中村さん:
基本はそう思っていますが、いままでの教育制度ではそういう考えができる子はあまり育っていないと思います。
逆に高度成長期と言われる時代においては”精度の高い仕事を文句を言わずにやる日本人”としてその教育を受けた人材がマッチしていたと思います。
これからもそういう仕事は残ると思いますが、それは機械化するより安いから人がやる仕事として残ってしまったときに、自分のやりたい事とか自分が社会に対して何ができるんだろうということを考えられる子供達にならないとかなり苦しいんじゃないかと思います。
”なんでもできる希望的な社会である一方で、人材が時代とミスマッチな時期”がしばらく続くのではないかと感じています。
栗林:
結局IT化は進んでいくものですし、自分のこれからを考えていく為の機会でもあるのかもしれないですね。
中村さんの考えるこれからの教育とはどんなことでしょうか。
中村さん:
”子供は基本パーフェクトな状態である”と子供達を見てて思います。自分自身で考えて、自分がやりたいことを発見して、自分の成長が楽しくて。他者に貢献して喜んでもらうという欲求がすでに備わっていたり、成長することに喜びを感じたり、
これからの時代を生きていくのに必要な要素をナチュラルにすでに持っていますよね。けれど、成長と共にいろんな大人の影響で、いい事・悪いことの分別や、怒られたり褒められたりすることで、内発的な動機から人の影響に切り替わる。
これを社会性を獲得したというのか、自発性が無くなって周りにやることを聞かなきゃいけない状態にすり替わっていってしまっているのか。
極論を言えば大人は子供の邪魔をしなきゃいいとも思ってしまいますが、専門家ではないのでどうなのかはわからないですね。
栗林:
子供達の「Well-Being=自分と周りの幸せ」を考える機会ですね。やりたいことを子供が自問して、成長できる環境を大人は意識しているのか。子供と一緒に保護者や先生の成長がこれからの教育に必要ですね。
ー企業紹介ー
VALUE BOOKS
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長野県上田市を拠点に、オンラインでの本の買取・販売のほか、実店舗「本と茶
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