Skip links

対談 フィンテックグローバル代表取締役会長

英語が自然に身に付く環境

栗林(以下ISN):今どんなことをされているか教えてください。

フィンテックグローバル代表取締役会長ロバート(以下ロバート): フィンテックグローバル代表取締役会長を務めます。東京為替市場に上場している投資会社で様々な取引をする中、今は、ムーミンのテーマパークを手掛け、北欧のデザインやアイディアを紹介しています。日本ではムーミンがとても人気があり、オリジナルを見にフィンランドへ旅行したり、世界の商品売り上げの40%は日本が貢献しています。自分はフィンランドの会社との取引が長く、2013年フィンランド大使から、このアイディアを聞きプロジェクトスタートに繋がりました。

ISN:日本企業とのお仕事、どう感じられていますか?

ロバート:良い点と悪い点があって、良い点は当然ながら日本企業との仕事がしやすい。言語の関係で日本企業は日本企業同士で仕事をしたがる傾向があります。

ISN:そうでしょうね。

ロバート:テーマパークで雇用される人達も、経験者を募ったけれど英語が全くでき無い。これに限らず、日本のツーリズムが勢いを増す一方で、日本が英語に対応できていないのは大きな問題です。フィンランドは真逆の例で、書類や契約書はフィンランドの会社同士でも英語であることが多い。

ISN:フィンランドで英語が浸透している理由は?

ロバート:フィンランドでは法律も英語で書かれている。多くの人口に支えられている国ではないし、フィンランド語も他の言語に似ているわけでもないので、英語は学ばなくてはならない。でも、テレビの放映がBBCなど英語に変換出来たり、映画は吹き替えなく字幕で放映されている。英語に聞き慣れて生活出来ていることは大きいだろう。

ISN:英語に関し恵まれた環境になって数十年。一方日本では「2言語は混乱する」なんて主張する人もいる。

ロバート:フィンランドでは人口の5%が使うスウェーデン語を、学校で学ぶ。なので3か国語は問題なく使いこなしている。

ISN:ヨーロッパの国々では、ずっと前から異なる言語に触れられる環境にある。数か国語を話すことは日常的ですね。

ロバート:日本にある外国企業は、やむを得ず日本人を雇うことで日本の会社とのコミュニケーション問題に対応している。私が日本に来たばかりのころは、海外からの銀行は外国人によって運営されていた。今では良かれ悪かれ地元密着になり、地球規模での取引がよりできにくくなって世界的に遅れを取っている。どの会社も英語が堪能な人材が必要で、間に合っていない今は社員を海外に研修や留学させたりしている。

 

エキスパートとしての仕事

ISN:能力の備わった、国際的視野のある人をリクルートしていると言われていましたね。

ロバート:東京の場合、今コンビニの仕事に適しているのは、日本語が堪能な外国人のようだ。今回フィンランドから帰ってきた成田空港で、流暢な日本語でリムジンバスのサービスをしていた人はネパール出身だった。先日のセミナーで日本のツーリズムの話題は、日本では5つ星ホテルで働く人が見つからない事実。そもそも英語だけでなく、多言語を話すことが出来、更には国際的な経験もないと5つ星ホテルでは仕事が出来ない。

ISN:5つ星ホテルが求めるような国際的な経験や感覚は1,2年で身に付くものではないです。

ロバート:フィンランドは国が小さいお陰で、外国人は自分の国の言葉を学ばない、自分で他の言語を学ばなくてはならないことに早い段階で気が付いた。日本はフランスやアメリカの様に国単体で何とかやっていけるので、危機感が薄い傾向にある。

ISN:東京でちょっと働こうと思っても英語が弱い、国際感覚に乏しいと希望する職が得られにくい。一般的な日本の教育を受けてきている学生は、準備の無いまま、突然世界の人たちと競う、酷なことになる。であれば準備をすれば良いのに。フィンテックグローバルでは、どう人材を確保しているのですか?

ロバート:テーマパークではヘッドハンターを使った。ファイナンス部署の日本人は英語が強く、皆留学の経験がある。

ISN:そんな人材をどこで見つけるのでしょう?

ロバート:即戦力になる人材はたいてい他のところで働いていることが多いですね。彼らは新しい経験を探している。ムーミンプロジェクトの近くにきれいな芸術大学があって、メディアが主なコースの一つにあります。

ISN:コミュニケーションを学ぶのですね。

ロバート:英語のコースが無いのです。メディアを学ぶのに。英語を学ばず、どうやって成り立つのだろう。それでも日本に初めて来たときに比べて、今の若者が持つ英語への興味や力は伸びている。

ISN:何でも早く始めるべきですね。

ロバート:そうですね。

ISN:二十歳を過ぎてこれから計画を立てよう、となると…。

ロバート:僕も早い時期に始めることが出来ていたらと思います。

 

国連と日本の銀行の職務から

ISN: 改めまして、これまでの経歴を教えてください。

ロバート:イギリスの大学(University of Cambridge)を出て、アメリカにわたり、MBA(University of Pennsylvania)を取りました。当時日本は世界の輸出入で大きな力をふるいだし、面白そうだったので日本に来ました。英語の問題は今よりずっと顕著で、日本語を学べば変化を起こすことが出来ると思いやってみました。言ったように、脳がもっと柔らかい時期だったら、もっとよかったのに。その後アメリカに行ったり、香港に行ったりしたけれど、どうやら今後は日本に定住しそうです。

ISN:それは嬉しいニュースです。国連世界銀行で働いていましたね。どんなきっかけで? 経験として得たものは?

ロバート:世界銀行はグローバル。良い経験になった。国連の機関で働くには少なくとも2つ以上の国連公用語を実務で使えなくてはならないが、1970年後半日本人をあまり雇用することが出来ず国連にとって大変なチャレンジだった。

ISN:目標人数に達するにはまだ時間がかかりそうですね。
ロバート:英語で業務が出来る日本人が見つからない。世界銀行では、任された地域を頻繁に訪れる。自分は世界銀行のプライベートセクターIFC(国際金融公社:世界銀行グループの一機関。貧困減少と生活改善を目的に発展途上国における民間セクターに対する投資支援や技術支援などを行う。)で、自分は南アジア担当、インド、れネパール、スリランカ、インドネシアを幾度も訪問した。お役所的な階層のために、事が進むスピードが遅いことが嫌で、アメリカの銀行に移り、日本に戻った。経済は成長していたが、銀行のシステムが遅く、それは日本の教育システムのせいでもあると見ている。英語もその一つ。日本の銀行員は数年で移動を繰り返し、多様のスキルを持つジェネラリストを作りたいのだろうが、全く異なる部署に回されてそこでのわずかな時間に全員が特別な技術を得るかは疑問。実際の世の中のニーズはスペシャリスト。日本がこのシステムがおかしいことに気が付くのが遅かった。

ISN:移動はまだ起きているようですが変化はあったのでしょうか?

ロバート:いくつかの銀行は変わりました。変わらないものあります。合併や倒産を繰り返し、日本長期信用銀行は消え、新生銀行が生まれ、消え、再編成。何をやっているのかが分からなかったらこんな軌跡になった。銀行員が大変な労力を払い数年で異なる部署に回され、1から学びなおして、それが実になっていないのであれば、しない方が良いのでは?世界経済が変わり、日本の長期不況とデフレーションのさなか中国が姿を現した。

 

これは良い問題?

ロバート:フィンランドの教師はとても尊敬されている。

ISN:よく聞きます。

ロバート:国連のテストにしても、この範囲から何を学んだかを聞くだけであり、生活で、ビジネスで、起業家的なクオリティーを持っているかは測ることが出来ないです。

ISN:問題解決の仕方や、助け合う気持ちなどは測れないですね。

ロバート:選択肢が用意されている問題も疑問。

ISN:考えが限られてしまいますね。

ロバート:ケンブリッジ大学では選択肢のある問題なんて見たことがありませんでした。意見を表現することに価値を置き、何を知っているかにはそれほどの興味がない。ケンブリッジ入学前、オックスフォードに入学試験で、数学専攻者も文学専攻者も、共通の問題がありました。それは「これは良い問題?」

ISN:それが問題ですか。

ロバート:そう。

ISN:与えられた時間は?

ロバート:30分だったかな。何を試されているかというと…

ISN:経験や哲学…

ロバート:哲学とかですね。初めて日本に来た時、NTTや電算公社の社員に夕方週1で英語を教えることを頼まれ、支払いの割が良かったので引き受けました。発音が問題だったので新聞の記事を読んでもらい、「自分がその人物だったらそうしていたと思う?」という問いかけに、皆立ち尽くすんです。慌てて新聞を読み返したり。

ISN:答えは自分で生み出す事を誰も教えてくれなかった。

ロバート:実際皆そうだったのです。そこに書かれていることが聞きたいんじゃないのに。

クリエイティビティ:前進

ロバート:実際に動いて、手や五感を使っての学び、興味を掻き立てる経験は、英語という言語同等に大切です。

ISN:そうですね。

ロバート:日本の昔からの教育方法はそんな機会が乏しいでしょう。

ISN:豊かではないですね。

ロバート:座りなさい、動かないで、繰り返し練習して覚えて。出来たら次に移るというパターンでしょうね。

ISN:もし教科書の模範にない答えを言ったら、「変な子」になるでしょう。クラスにいたら他の子と足並みが合わない、面倒な子。そんなことが沢山起きたらクラスが管理できなくなる。日本は今のやり方で、つまらなくても一定の水準を保ち、当面何とかやっていけるかもしれません。ただし、その場所にとどまるという事は、今の時代の世界の動きからとてつもない勢いで後退していくことになります。
ロバート:同感です。日本の若者は大きな会社に勤めることに興味を無くし出し、その一部はゲームの会社を作ったりしている。最近の傾向に変化がありますね。

ISN:クリエイティブであり、自分の好きで得意な事の起業は良いと思います。アメリカではコンピュータサイエンスが多くのカレッジ大学で提供されています。日本ではいまだにコンピュータサイエンスはちょっと変わった子がやるもの、というイメージがあります。

ロバート:知り合いで、パーティーやウエディングの花を扱うビジネスを売って成功した人がいます。はじめはプロのサッカー選手になりたかったけど、叶わずに、起業家として転換した。彼は大学にいっていないんじゃないかな。

ISN:なるほど。

ロバート:テーマパークで雇用された別の人は、大変起業家的でクリエイティブ。オリジナルの食べ物やクラフト、飲み物のコーナーの設置まで貢献している。大量生産されたような答えを出さない人もいる。ソニーも三菱も大量に雇用することはなくなっているので、何か他の事をする必要はあるね。

ISN:個人、会社、関係ないですね。誰も考えたことのない”もの”や”方法”を考える習慣とそれをサポートする環境。更には時間やチーム、顧客の管理スキル…。人間関係も含めオールマイティーな能力は「教えてもらう」ものではないです。

ロバート:小さいころ学校でインパクトのあった先生は、その教科についてどれだけ知っているかに限らず、その人の人間性でした。何を教えてもらったかよりもどんな関りがあったか。ISNでは先生たちが世界中からきているので、生徒達の興味は既に別のレベルにあるね。

ISN:先生一人一人異なる文化、宗教、価値を持ちます。

ロバート:フィンテックグローバルでは創造性に長けて、アドベンチャーの精神が高い人材を求めている。座って、指令を待っているタイプはいくらでもいるのだけれど。

ロバート:1970年代フィンランドに行った頃は、英語が堪能なフィンランド人は少なかった。ここまでの結果を出すというのは、政府の意識的な戦略ですね。

ISN:ISNの学びの環境は、機能し、結果を出しています。誰かが、いつかやらなければならない事をしているだけだと思っています。

ロバート:安く、確実に、国際感覚とスキルを持つ子供達を育てていますね。日本政府は喜んで事業を補助するのでは?

ISN:先日のプログラミングと教育のセミナーで、短い講演を頼まれ、あるプログラマーから質問がありました。「小さい子に英語って、あまり意味がないのでは?これからはテクノロジーが訳してくれるのに。」私はこう返答しました。「外国語を話すことで自信が付く、それは音楽やスポーツが出来るのと同じことです。学ぶことが目的ではなく、その先にあるものが、私たちの真の興味です。」彼は外国語を話す人との会話やジョークを、機械を使って理解し、笑うのでしょうか?

 

******
インタビューを終え
国連での取り組みから、世界各地で金融に関するスペシャリストとして活躍されているロバートさん。日本、そして古民家に大変興味を持たれ、世界人として日本について感じたことを語ってくださります。お願いするたびにとってくださるお話の機会は、私にとって、ありがたいブレインストーミングの時間です。貴重な経験をされてきている方に、純粋にISNの活動に賛同頂き、心より感謝。ISNにとって一番意味のある形で反映していくことが出来たらと思います。