ブログ

デフォルトイメージ

信州Well-being有識者対談インタビュー Vol.15

ISN × 河内洋平さん(炭火焼鳥 河内屋 本店)

信州Well-being有識者対談インタビュー Vol.15

栗林: ご自身と周りの方々のウェルビーイングを意識して取り組まれていることはありますか?
結局、ウェルビーイングって、私たちの中ではいろんな要素があって。たとえば健康、家族、愛、自分が学んでいること、周りの人たち、お金や仕事など、そのどれか一つが突出しているわけではなく、全体のバランスが取れている状態──つまり「自分と周りが豊かな状態」というのが最終的な目指す形なんです。
だから私たちは、いろんなスキルを身につけたり、学んだりしていますが、コミュニケーターになるために学んでいるわけではなく、そうしたバランスの取れた人になることで、自分も楽だし、相手も楽だし、お互いに良いものを作り合える、そういう関係を築けると感じています。
お互いの豊かさが、自分だけでなく、周りにも波及していく。そういうものがウェルビーイングだと思っていて。
それはお仕事でもご家庭でも構いませんが、どんなふうに感じていらっしゃるか、というのがまず1つ目。
そしてもう1つは、お子さんたちに対して、ISNにどんなことを期待されているか。
この2つをお聞かせいただければと思います。
ではまず、お仕事についてお伺いしてもよろしいですか?

河内さん: 主に焼き鳥屋ですね。

栗林: 今は本店にお邪魔していますが、他にもいくつか店舗をお持ちなんですよね?

河内さん: はい、他に4店舗あります。今準備しているお店が1件あって、それを合わせて5件になる予定です。

栗林: すごいですね!いつ頃から始められたんですか?

河内さん: もう12年ほどになりますかね。

栗林: ご自身で始められたんですか?

河内さん: そうです。

栗林: きっかけは何だったんですか?

河内さん: 独立すること自体が目的で、正直、業種は何でもよかったんです。焼き鳥屋にこだわっていたわけではなく、飲食業でもそれ以外でもよかった。ただ、単純に「お金持ちになりたい」と思っていました。

栗林: その前はどこかで働いていらっしゃったんですか? それともいきなり起業を?

河内さん: 大学を卒業してから2年間、都内の焼き鳥チェーンで社員として働いていました。そのあと、「独立できるかもしれない」と思って、資金を貯めるために転職したんです。転職先はタバコのメーカーで、給料が一番良かったんですよ。当時は人気のない業界でしたが、外資系(ロンドン本社)の会社でした。
その会社に勤めながら、新宿に住んでいました。ただ、遊ぶ場所が多すぎて全然お金が貯まらなかったんです(笑)。
それで「一番の辺境地に飛ばしてくれ」と異動願いを出したら、「安曇野へ行け」と言われまして。もう15年ほど前ですね。ちょうど東日本大震災の翌月に松本へ来て、そこから松本にいます。
その会社では営業職として3年間、松本・安曇野エリアを担当しました。そして3年経って退職し、そのまま松本に残って独立した、という流れです。松本にはそれまで縁もゆかりもありませんでした。

栗林: 焼き鳥屋での経験はありつつも、直接その延長ではなかったんですね。

河内さん: そうですね。お金を貯めるためだけにタバコの業界に行き、その後独立しました。
商売をやりたいという気持ちは、振り返ると小学生の頃からあったんだと思います。小学生の時に相撲をやっていたんですが、その頃、友達のお母さんが大和証券に勤めていたんです。
その友達は当時流行していた「たまごっち」を持っていて、どうやって手に入れたのか聞いたら、「株主優待で送られてきた」と言うんです。小学生の自分には意味が分からなかったんですが、話を聞いていくと、その子は幼稚園の頃からお小遣いを大和証券の口座に入れて、バンダイやナムコ、任天堂の株を買っていたそうで。それで株主優待でおもちゃが届く、と。
「そんな世界があるのか」と衝撃を受けましたね。

中学生になってから母に相談して、母の名義で口座を作ってもらい、実際に自分で株を買い始めました。友達のお母さんに頼んで、電話で買い付けをお願いして。もちろん、アプリもネットもない時代ですから。
その方が「これから上がりそうな銘柄」として、大人向けの資料をコピーしてくれて、それを読みながら自分で選んでいました。当時、松本清がライブドアを買収していた頃です。

栗林: その頃から経済の資料を読んでいたんですね。

河内さん: ええ、ただ単に「お金が欲しかった」だけです(笑)。不労所得という言葉も知りませんでしたが、「働かずにお金が入ってきたらいいな」と。

栗林: 今で言う「資産形成」的な発想ですが、当時はもっと素朴な願望だったんですね。

河内さん: そうです。中学生になって株を買い始めて、「お金が増える」という感覚を覚えました。当時は夜に『ワールドビジネスサテライト』や『ニュースステーション』を見ながら、朝まで経済ニュースを追っていましたね。

栗林: へえ。貯めること、増やすこと、仕組みへの興味がその頃から強かったんですね。

河内さん: 自分の持っている株の値段が翌日どう動くかを知りたくて、毎朝新聞で株価を確認して、マーカーで印をつけて、自分でグラフを書いていました。

栗林: 素晴らしいお母さんのお友達でしたね。「たまごっちが欲しい」という気持ちが、まさかそんな学びにつながるとは(笑)。まさに良いご縁でしたね。

河内さん: そうですね。もう一つ、小さい頃に印象的だったのは、「口約束では何も果たされない」ということを学んだことです。小学校低学年の頃から、家族間でも契約書を書いていました。

栗林: 契約書ですか? メモのようなものではなく?

河内さん: いえ、ちゃんと契約書です。ノート1冊を契約書専用にして、たとえば「次の相撲大会で優勝したらどうする」という約束を自分で書き、父とサインしていました。

栗林: 1枚1枚ではなく、ノートに蓄積していくんですね。
つまり、過去の契約も残り、新しい約束も同じノートで更新していくと。

河内さん: そうです。文書に残っていないものは無効だ、という感覚でした。それを小学校低学年の頃からやっていました。

栗林: 面白いですね。家族との関係を明文化するというか。書いておけば言い争いも減るし、感情的にならずに済みますよね。

河内さん: そうですね。やって良かったと思います。当時はなぜ始めたのか分かりませんが、父に「約束が守られない」と言ったとき、「紙に残していないお前が悪い」と言われて(笑)。

栗林: お父さまは契約関係のお仕事をされていたんですか?

河内さん: そういう部署にはいたようですが、専門職ではなかったですね。

栗林: なるほど。でもその経験が、今の河内さんの考え方にもつながっているように思います。言葉だけではなく、きちんと形にして責任を持つという。

河内さん: そうかもしれませんね。

河内さん:その後、高校相撲がやりたくて、当時愛知県にいたんですけども、明大中野って貴乃花とか若乃花がいた高校へ越境して、愛知県から出してもらうんですけども、そこそこ金持ち学校だったんですよ。私学で中高大まで一貫で。県外から来る人なんかいないんですよ、都内の金持ちしかいないんで。周り、金持ちばっかりだったんですよね。その環境がまた良かったですよね。今になって思えば。

栗林:どう良かったんですか。

河内さん:金持ちの考え方とか、仕事の働き方とか。平日に試合があってもお父さんとお母さん一緒に見に来るのが当たり前とか。あとは、ご飯連れてってもらっても、食べちゃいけないものないとか。選んだものは誰もNOって言わない。みんなワーッとお金を出してみんなで楽しむ、みたいな。なんかそういう環境がすごく良かったですね。いまだにその当時の高校・大学、一緒にチーム組んでたやつとか遊んでたやつで、まっとうにサラリーマンやってるやついないんですよ。何かしらやってますね。自分で事業起こしてるやつもいますし、家継いでるやつもいますし、自分で立ち上げたやつもいますけど、普通にサラリーマンやってるのは思い浮かばないぐらいいないんですよね。そういう環境に自分がいたのが、すごく良かったなと思っています。

栗林:なるほど。じゃあ、自分がやってきたことでそういった方向でご縁があって、自分もそういう水準じゃないけど、いいなって思う体験とか見れたからすごくいいなって思う。イメージが湧いたし、じゃあそのビジョンじゃないですけど、ゴールが見えた時にそっちに行くには。

河内さん:ホームページの最初にも書いたと思うんですけど、地方から私学の高校へ出してもらって、部活が忙しいのでバイトもせずに、学費も全額、奨学金借りることなく父親に払ってもらったので、同じことを今自分の娘にしてやりますかってなったら、多分松本から東京の大学へ出すっていうと、普通に1000万稼いだって足らないんですよ。そうなった時に、日々サラリーマンでいてはもう自分のやりたいこととか、やらせてあげたいことができない。そこの当時の自分とのリンクですよね。当時自分が高校生の時に、好きな時に部活して、バイトもすることなくて、ずっと大学まで7年間ですかね。面倒見てもらって、住む所も小遣いまでもらって、部屋もできて。今、娘がしたいって言ったら、今のまま行くと、もしかしたらアメリカ行きたいとか、どんどん行きたいとかって言ったらいいのに、そこまでの学費と生活面倒見られますかっていうのは、一番こういう商売をする上での原動力ですね。させてあげたいなっていうところですよね。

栗林:子どものまだ測定できない規模の夢を叶えるのに、今自分が何が準備できたりとか、どこまでサポートできるかっていうのがモチベーションになってるわけですね。同感です。測定不能だからどこまで頑張ったらいいんだよ、みたいなのもあるけど、でも同時にそのモチベーションがなかったら、結構なんていうのかな、嫌いな自分になっていくような気もするんですよ。本当はできるのにやろうとしなかったり、言い訳してやらなかったりするけど。でも私はこっちに行きたいから、一つの理由はそれであり、それによって自分の周りの人たちも豊かになっていくっていう。だからそれを自己発電できているのは、すごく循環がいいなって話を聞いてて思いました。

河内さん:そうですね。あと、いいホテルに泊まってみたいなとか、いいところでご飯食べたいなとか、いい車乗りたいなとか。だんだんこれで12年ですか、この商売を始めて。それなりのホテルにも泊まれるようになったし、それなりの車も買ったし、家も買ってってなると、だんだん自分が消費するよりも、うちの社員だとか子どもたちに投資したいなって思いになってきましたね。

栗林:そうですよね。だからそれがウェルビーイングって何ですかって聞いていただいた時に、本当、自分の豊かさが周りに波及していって。結局この人のエネルギーだったりとかモチベーションが空っぽなのに、他の人を幸せには絶対にできないから。結局順番的には自分が満たされて、でもその満たされ方っていうのは、与えながらとかでないと満たされないから。なんか話を聞いてて、それを今度は周りの人たちの豊かさを作っていく。子どもたちもそうだし、従業員の方もそうだし、地域の方もそうだし、お客さんもそうだし。それが帰ってきてくるから、自分は自己満足というか、そういう、なんていうのかな、それが作れるような源になってらっしゃるんじゃないかなって聞いてて思いました。そういう流れがあって、今ここに。

栗林:では、それと重ねて。周りの人たちの豊かさ、自分で改めて、確かに自分作ってるなって多分感じられると思うんですけど、それってどうですかね。自分にとってそれ大事ですかっていうことと、周りの人にとっていわゆるウェルビーイングって豊かさみたいなものがあるんですけど、大事ですかっていう質問というか、どう思いますか。

河内さん:自分の周りに人がいてくれて、その人たちが幸せになるに越したことないんですけども、必要な人が必要なタイミングで現れると思っているので、特別引っ張ってきたりとかつなぎ止めたりということはあまり意識してないですけど。来るもの拒まず、去るもの追わず、ですけど、そっちを意識します。ただ、周りの方によく言われるのは、「従業員どうやって集めてるんですか」って。無理に募集かけたこともないんです。外にお金払って募集媒体かけたこともない。お店出そうかなと思って用意すると、社員の募集がポッと来たりとか、紹介で入ってきたりとか。今まで12年間、そうやってやれてきてしまったので。

栗林:例えば幼少期の頃から、子どもの頃からお金を貯めたいっていう自分の気持ちに素直にいろいろ自分で調べてみたりとか、それを許してくれたご両親がいたりとか。高校時代でいろんなお金の使い方とか生活の仕方をする人たちがいて、その人たちといろんな自分が体験したことのないこととか発想とかっていうのに触れてきたっていうのが、結構自分の中で広げてくれたりとか、豊かさを作ってきてくれて。今出会っている人たちに対しても、豊かさの自分を作っているもの、たぶん感謝とかあるんじゃないかなと思って。自分が作ってきたものがあるから、その経験とかイメージ、「これっていいな」ってものを届けられる。だから勝手な想像ですけど、人との接し方っていうのが、そういうのを大切にするというか、自然にそういうのもあるんじゃないかなって勝手に想像しますけど。じゃあそういうのを含めて、自分のお子さんが生活する環境とか学ぶ場所として、そういう場所ってどういうふうだったらいいなっていうような機会がありますか?

河内さん:なんとなく選んだところでいいと。特別意識することはしてないんですよね。おそらくどうしてもISNじゃなきゃいけないってこともなかったりして。なんとなく嫁が探してきて、一番申し込み少なそうだし、ここまで行けるっていうから「申し込んでみていい?」って言われたら、「じゃあそこ申し込んでみれば?」って言ったら、何の障壁もなくスルスルって入っていったから、じゃあそういう運命だったんでしょう。

栗林:なるほど。

河内さん:そこで起きていることに本人がどう対応していくかを見守る、みたいな感じですかね。本人が毎朝起きて行きたいって言えば行けばいいし、「今日行かない」って言えば行かなくていいし、「やめたい」って言うならやめればいいし。やっぱり、もうどうしても「こうじゃなきゃいけない」「あなた行ってこないと世の中終わるよ」みたいな、そんなことは全く思わないんですよね。

栗林:なるほど。ちょっと想像しながらじゃないとお互いに分かりにくいかと思うんですけど、例えばそういう発想じゃない人たちも世の中にはたくさんいるじゃないですか。うちとか限らずに、いわゆる「学校は」とか「英語は」とか、「絶対にこれやらなきゃいけない」とか。でもそれを本人の主体性だったり、あと自然の流れだったりっていうのに任せているっていうところの、なんですかね、なぜそういう状態なんですかね。それを大切にされているんですか?

河内さん:より苦手なことを克服して、そこを強くしようと思っても、それって絶対強みにならないんですよ。苦手なものは一生苦手なので、無理にそれを克服してやろうとかする必要ない。それよりももっと自分の中にある強い部分、強みに入ってることを、他と比較して簡単にできていることをもっと伸ばしていく方が、ゆくゆく社会に出た時に武器になると思うんですよ。無理にやりたくないことはやる必要ない。ただ、どうしても宇宙飛行士になりたいんだとか、大学を出てないと受験する資格すらないような職種に就きたいとかっていうんであれば、その道筋を見せてあげるべきだと思うんですけども。まだ今うちの娘はそういうところでもないし、まだ何がやりたいのか、何が得意なのかって探す段階なので、そこまではいいかなと思っています。

栗林:そうですよね。個人的にじゃないですけど、幼少期から小学生くらいにかけては、本当に先ほど言われたように自分探しというか、いろんな、特に五感を使って。苦手なこともみんなと一緒にやってみたりとか。例えば苦手なことってパッと思いつくと、中にはやっぱり虫が苦手とか、土を触るのが汚いとかって感じる人たちがいたりして、匂いが臭いとか。そういう本当にいろんな環境だったり、あと遊びだったり、体の動かし方だったり、リズムだったり、音楽だったりとかもいろいろあって、とにかくいろんな体験をさせてあげたりして。それをあんまりジャッジしないというか、あんまり目的にこだわりすぎなかったり、楽しい時間を過ごすみたいな中でしてあげた方が、私はちょっと考えるタイプなんですけど、その方がその子が勝手に芽を伸ばすんじゃないかなって思っていて。こっちがコントロールして、「この音楽の中でドレミを上手に弾けるようになろう」みたいな、ちょっと策略的なものを持ってきちゃうと、結構みんなそれを期待されてるんだろうなっていうメッセージも受け取るし、それで評価されるんだろうなっていうのも受け取ってしまうので。だから、こういうふうに投げて、そこで一番面白いとかやってみたいこと、そういったものを私たちは提供できていて、面白いとかって食いついてこれるようなルールをみんなで決めたりとか、活動を決められたらいいなって思います。

時間をとっていただいてありがとうございました。

TOP / ブログ / 信州Well-being有識者対談インタビュー Vol.15