信州Well-being有識者対談インタビュー Vol.9
今回対談するのはInternational School of Nagano代表栗林と、株式会社ミクロ発條 代表取締役社長 小島拓也 さんです。
栗林: 小島さんにとってウェルビーングってどんな存在ですか?
小島: 僕はもともとそんなに広く社会貢献とかを考える人間ではなかった。仕事も大変だったし、会社の業績を上げるとか、中国の事業どうするとか、そういうところに自分の焦点を絞っていたから。例えばJCとかロータリーの意味がわからなかった。だからそのコミュニティーに入らなかったし、その時間もなかった。でも自分の幸せの価値観、自分は何を持って幸せになるかなと思った時に、1つは家族があった。みんな健康で幸せでいること、自分自身が健康でいること。教養も知識持っていかなければいけない、金銭的にある程度余裕が欲しい。自分の中で趣味が欲しい。自分自身が謳歌されていること。そして仕事が充実していること。その6つのひとつひとつをやってる中で、趣味と健康についてはトライアスロンがある。トライアスロンをやることで、この2つを兼ねることができる。仕事は従事しなければならない。家族の幸せとなった時、街が良くなることってすごく大切なことで、自分の家族が関わっている人たちが幸せか、そのコミュニティーは、となると関係性がずっとつながる。その中で思った事は自分だけじゃなくて、自分の周りの人たちが幸せになっている条件と言うふうに考えると、自分たちの社会が成り立っていないとダメだよねと思い始めた。僕の中では諏訪市が「住んでてよかった」「この街にもっと住みたいな」と言うような場所になったらいいなと思っていて、松本に家族を住まわせた時は、松本の方が家族が幸せになれる、教育が充実していると思った。自分がしなきゃいけない貢献ていろいろあるなって思ってやっているんですね。とにかく自分に関わってやっている人たちが幸せになっていくことが自分にとっては大きな課題だなと思っている。で、50歳位からいろんなことやろうかなと思っていたんです。
栗林: 大会のことを教えてください。
小島: 自分の人生の中で何ができるかなって思った時、諏訪市のことを考えて、まず諏訪湖が汚い。だから人が寄り付かない。諏訪湖でみんなが水遊びしたり、ウィンドサーフィンしていたら、絶対に人が集まってくるだろうって思った。結局諏訪湖は汚いと地元の人たちが思っていて。大会をやりたいと思い始めていたのは40歳の前半だった。諏訪湖が泳げる状態になったら、街が変わると思ったんです。2018年位の時にトライアスロン協会の人たちが諏訪に来て、2028年の国体を諏訪湖でやりたいと話が来て、諏訪市の市長から僕宛にトライアスロンやってるのは僕だからと言うふうに紹介され、協会の人たちを紹介された。「諏訪湖って泳げるんですか」って聞いたら、「小島さん達全然諏訪湖の状況知らないよね。諏訪湖、泳げるよ」って言われた。「トライアスロンやってるからわかるでしょ。」確かにいろんな場所がある。泳ぎたいと思えるところでないところもある。で、諏訪湖で泳いでみたら、泳げるじゃん。でも課題はある。例えば藻が出るとか。じゃあ泳げる状態になったら大会ができるのかなって思っていた。そうは言っても2028年まで10年の間に何とかなるかもしれないと思っていた。
信大の先生にも、企業とか協賛することによって、諏訪湖が何とか泳げるようになりませんかねと相談した。先生から言われたのは「いや小島さんの気持ちはありがたいんだけど、毎月3,000,000円寄付したからといってきれいになるわけじゃないし、きれいにするのは行政の仕事。小島さんの仕事はみんなに興味を持たせることだから、小島さんがトライアスロンをやるのはまさしくいいんだ。楽しく面白くやって、盛り上げていくのが民間の人の仕事なんだよ。なるほどなと思った。僕には使命ができたなと。
そして、もう一つきっかけがあって、トライアスロン大会を外でやっている人たちに「諏訪湖は何でトライアスロンをやらないの」と聞かれたときにまだ泳げないからと答えたら「小島さん待っているよ。泳げるなったらやるんじゃなくって泳げるんだったらやってきれいにしていくものだから、そうやって街はきれいになっていくんだから小島さんやるべきだよ」という言葉が、僕の背中をぐんと押しました。
僕は当時その時47か48だったんですよ。やるんだったら50までで決めていて。自分の中で期限作っちゃうんです。50までに大会をやりたい。47の時にじゃあやるかと孤独に目標を決めたけど、そうじゃなくて、チームを作ってトライアスロンやろうよって話をして。仲間の1人に、トライアスロンをやらせて、そしてその1人がはまっちゃって、もっと仲間を呼ぼうと声をかけ始めてたくさん仲間ができて。そしてトライアスロンチームができて、チームができたと同時に僕が大会やりたいんだって話をしたら、みんながやりたいやりたいと言うことになって…。
コロナになったことがきっかけで、みんな暇になってだからこそその活動ができて結果的に立ち上がったのが2022年大会だったんですよ。だからそこには1つ諏訪湖を良くして、諏訪湖の周りに人が集まって遊べる位になるまできれいにして、諏訪湖にいろんな人たちに戻ってきてもらって、全国の中でも住みやすい街になるというのが、僕の恩返しかなと。そして家族を信大付属に行かせるために松本に住まわせてますけど、その家族、子供たちが、いや僕たち諏訪のほうに住みたいんだって言ってもらえるような街づくりをするのが自分の仕事だなと思って大会をやってるんです。
栗林: 1番初めに話してくださった6つの例の中で、自分が中心にあるんだけれども、それを取り巻いて諏訪湖の事、会社の事など外枠と繋がっていて、それで自分のバランスをとっている感じがしました。
小島: そうかもしれないです、どれも1つも書けれない。バランスをとってるかもしれない。
栗林: いいなと思ったのは、自分が中心にいて、そのバランスをとっている。「あれやらなきゃ」とか言う気持ちになると負担になったり、作業になっちゃったりすると思うけど。やりたい事が「みんなとやらないと自分の夢は叶わない」的な発想なんだなって思いました。
小島: あぁそうですね、そう自分のしたくない事はしないし、雑になっちゃう。
栗林: いわゆる地域活性って「そこに住んでいる人たちが楽しめる所だったら、口コミで人が集まってくるよ」って言うのと同じ発想だと思うんですけど、自分たちがいかにそこで豊かさが作れるか、をされてるんだなと思いました。そんな仲間や楽しい人たちが集まっているのが1つの成果で、良い人間関係がつくれてる感じですね。
小島: 良い仲間がいる街ですね。そんな僕の話にみんな賛同してくれて、6市町村のメンバーが動いてくれたからトライアスロンができた。トライアスロンをやってない人たちの方が多いんですよ。自分の街を良くしたい想いは1つで、このイベントに引っ掛けてきた感じですね。ちょっと大変だけど、辞められないし(笑)
栗林: それが自然発生的に聞こえるからいいなって思うんですよ。今日初めてウェルビーイングという言葉を聞いた人が、それなんですかと言う質問をして「それ何をしなきゃいけないんだろう」と言うふうに受け止めて欲しくない。私のこのインタビューの目的が、そもそもそれで生きている人達というか、企業でも人でも、人間関係とか事業とか自分の生活バランスとかがある程度バランスが取れている人は、既にウェルビーイングな生活をしている方であって、その一方で、自分よがりだとなかなか希望する成果だったり、状態が得られないようで。だからそんなヒントになるようなインタビューになり、まとまりが良かったです。
小島: そういうことが真剣に考えられるようになったのは40代後半の頃かな?
栗林: それはどんなきっかけですか?移住者がもっと増えたらいいなとか、工場がもっと賑やかになれば良いとか?
小島: 1つは、どうせ飲み食いしているのであれば、どこでもいいとか、外ではなくて。地元の良い店を会社が守っていく意識はあるのかと言われた事。昔は、良いお店があったら、それがなくならないように、企業が支えてきたと言う話を聞いて、なるほどと。
他には、僕の親友がある日、「お前みたいに外に出ている人間は、戻ってきたら、地元で何が必要かわかるだろう。そういう所で、地域貢献しないと。いつまでたっても外で遊んでるの?」て言われたんです。
後は、僕の会社が後継したときに何が起こるかなって考えて。自己利益の事しか考えていない。人口が増えて優秀な人が増えたら、自分の会社に良い人材が集まる、世界戦略以外の事は考えていない。それ以外に何ができるのかなって…だったら自分の仕事をしたほうがいいなと思っていたんですよ。ところがうちの従業員たちが何をやっているかと言うと、みんな御柱、消防を頑張っている。そんな活動を地区や街のためにやっている。僕にはそれが欠落していて…。彼らは自分たちの地区の事をちゃんと考えている。そういう時見てすごく反省した。会社の社長としてそんなに時間をかけてやれないし、じゃあ何ができるか。商工会やロータリーに入って、委員長をやると言うのも自分らしくない、そこで飲んだり食べたりしていても違う、最初の話に戻る。
栗林: きっと器が大きくなってきたんでしょうね。きっとファイナンス的に、人脈的に、心の余裕が生まれてきたから。ほんとに興味がない頃ってそういうものもなかったかもしれないですね。
小島: かもしれませんね。
栗林: 他の人がやっていても「それ俺じゃない」になっていたかもしれないですね。いつの間にかできていた。成長みたいに聞こえます。
小島: 本当に考えていなかったですよ。
栗林: 諏訪はこういう人がいてくれてラッキーですね。
小島: うちの会社のメンバーでも、地域のことをちゃんとやっていた人と、やっていなかった人は、組織の中での動きが違うんです。地元の上下関係の中で育っているメンバーって、会社の中でも動き方が上手いんです。先輩後輩はずっと地元でもあるし、その中で自分の立ち位置を持っているのと、地元の事何もしてない人では、組織の動き方が全然違います。社会で守られるって凄く大事なこと。田舎は消防やお祭りとかがあるから、そういうコミュニティーって大事だなと思う。仕事だけじゃなくて自分もそういうところに足を入れたほうがいいなって言う気持ちがあるんです。
栗林: 身近な家族から幸せを繋ぐ発想、素敵です。コミュニティー全体の幸せを、楽しくみんなと創っているのが、小島さんらしく、わかりやすいですね。「自分の使命」という言葉、心に響きました。お話を聞かせて頂きありがとうございました。