
信州Well-being有識者対談インタビュー Vol.20
プロゴルファー 塚田よおすけさんインタビュー
「嫌なことが85%あっても、一つの良いことを見つける」
栗林:
本日お伺いしたいのは、塚田さんにとっての「Well-being(ウェルビーイング)」についてです。
その価値観に触れる前に、まずはどのようなお仕事をされているのか教えていただけますか。
塚田さん:
プロゴルファーです。
栗林:
プロゴルファーとして活動されているんですね。いつ頃から始められたのでしょうか。
塚田さん:
2009年にプロ転向しました。今年で14年くらいになりますね。ゴルフ自体は10歳から始めました。中学・高校はアメリカに行っています。
栗林:
かなり早い時期から海外へ行かれたんですね。
塚田さん:
当時ゴルフを教わっていた先生がアメリカ人で、その先生が帰国することになったんです。「あなたどうする?」って聞かれて、「じゃあ行くか」というような感じでした。
英語も話せるようになりたかったですしね。
栗林:
アメリカでもゴルフを続けられていたんですか?
塚田さん:
もちろんです。日本だと「ゴルフが上手だから奨学金生として学校に入れる」という考え方がありますけど、アメリカは逆なんです。勉強ができなければ入れない。
だから高校を卒業するだけでも精一杯でした。
その後、ゴルフの関連で大学から推薦もいくつかいただいて日本へ戻りました。
栗林:
大学でもゴルフを続けられたんですね。
塚田さん:
そうです。そのままプロ転向しました。
結局プロになるなら大学の肩書きは関係ありませんでした。どこの大学を出たかより、結果を出せるかどうかです。
栗林:
ストレートな人生を歩まれていますね。
塚田さん:
私は12歳から親元を離れているので、今日までほとんど家族と一緒に暮らしていません。
もちろん支えてもらったから今があります。大学を辞めると親に伝えた時は、むしろ喜ばれました。
「これで学費払わなくて済むな」と。そこからはずっと自分でやってきました。
栗林:
今日お会いした時に、塚田さんが「いつも幸せです」とおっしゃっていたのが印象的でした。
塚田さんにとって、幸せやWell-beingにはどんな価値がありますか?
塚田さん:
価値と言われると難しいですね。仕事なんて、うまくいかないことの方が圧倒的に多いんですよ。
僕の仕事は結果が見える世界だから、良い時と悪い時がはっきりしています。
良い時は人が寄ってくるし、悪い時は寄ってこない。
でも別に人のためにやっているわけじゃない。自分のためだし、家族のためです。だから気にならないんですよね。
仮に85%嫌なことがあったとしても、その中で一つ良いことを見つける。「今日はこんなことがあったな」って。
そうすると不思議と85%の嫌なことが小さくなっていくんです。悪いことばかり見ていたら、当然そっちへ引っ張られますからね。
栗林:
さまざまな経験や出会いが、その考え方につながっているのでしょうか。
塚田さん:
出会いは多いと思います。でもね、よく「努力してきた人たちばかりですよね」って言われるんですけど、私は努力ってあまり好きじゃないんですよ。
栗林:
そうなんですか。
塚田さん:
もし自分に目指したい姿があるなら、そこへ向かうのは当たり前じゃないですか。僕はそれを努力とは思わない。
必然だと思うんです。努力したから結果が出るとも限らないし。もちろん才能やセンスもあるでしょうしね。だから「努力してます」という言葉にはあまり興味がないです。


「何になるかではなく、自分らしくいられるか」
栗林:
好きなことを仕事にされている塚田さんですが、お子さんにはどのような生活や学びの環境を期待されていますか?
塚田さん:
正直、私はほとんど家にいないんですよ。親として何か特別なことをしているかと言われると、何もしていないと思います。
だから逆に、学校の先生たちがどういうふうに教えてくれて、どんな子に育っていくのかなという期待の方が大きいですね。うちの妻は本当にいろいろやってくれていますし、先生方もそうです。その人たちに育ててもらっている感覚の方が強いです。
栗林:
ISNを選ばれたのは、どのような理由だったのでしょうか。
塚田さん:
私自身が英語を少し使えるということもあって、「長野にもこういう学校があるなら入れてみたら?」という感じでした。でも正直なところ、入ってみなければ分からないじゃないですか。良ければ続ければいいし、合わなければ別の選択をすればいい。それはどの家庭でも同じだと思います。
入る前から良い悪いを判断することはできないですし、まずはやってみる。その中で子どもが楽しそうならそれでいいし、成長していけばもっといい。私はそのくらいの感覚です。
栗林:
お子さんに対して、ご自身から何か教えることはありますか?
塚田さん:
ほとんどないですね。私は「背中を見て育てばいい」と思っているタイプなんです。
妻はいつも一緒にいるので、日々のことは妻が見てくれている。私は常に家にいるわけではないので、1から10まで細かく言うことはできません。だから自分の姿を見て何か感じてくれればいいかなと思っています。
栗林:
その「背中を見て育てばいい」という考えには、どんな思いがあるのでしょうか。
塚田さん:
難しいですよね。親だったら誰でも理想はあると思います。でも、思った通りには育たないじゃないですか。
例えば10人の親がいたら、10人とも違う答えになると思うんです。だから私は「こうなってほしい」というのをあまり持っていません。
ただ一つあるとしたら、自分がされて嫌なことは人にしないでほしい。それくらいです。
でも、それだって子どもの頃に完璧にできるかと言ったら難しい。大人になってから気づくこともたくさんありますからね。
だから5歳だからこう、7歳だからこう、という理想は特にないんです。
栗林:
私たちも、子どもたちは一人ひとりユニークな存在だと思っています。まず自分自身の個性に気づき、それを認めながら周りの違いも認めていく。そして、その子らしさを伸ばしていきたい。
将来の職業が大きく変わっていく時代だからこそ、「何になるか」よりも「自分らしくいられるか」が大切だと考えているんです。
塚田さん:
私も子どもには、自分らしくいてくれればいいと思っています。
結局、人は周りの大人を見て育つじゃないですか。親もそうだし、先生もそうだし、地域の人もそう。良いところも悪いところも含めて学んでいく。だから何を学ぶかは本人次第なんですよね。
学校や親が全部コントロールできるものではないと思っています。
栗林:
学校にはどのような役割を期待されていますか?
塚田さん:
学びの環境は学校が作るものだと思っています。だから私は学校と妻に委ねています。
学校で今日何があったのか。楽しかったのか。つまらなかったのか。どんな気持ちだったのか。そういう話を家で聞いて、一緒に話をする。それくらいですね。
私が何かを教えるというより、子どもの話を聞く。それが一番大事なのかなと思っています。
私は「自分が育てている」という感覚は全くないんです。学校や先生方、そして妻が中心にいて、僕はその土台を支えているだけ。だからいつも感謝しています。先生たちにも、妻にも。
「ありがとうございます」という気持ちの方が大きいですね。私自身は、そのおかげで親として成り立っていると思っています。


「失敗を恐れず、挑戦し続けてほしい」
栗林:
ここまでお話を伺っていて、お子さんや学校に対しても、とても現実的な視点をお持ちだなと感じます。
インターナショナルスクールに通わせることについては、どのように考えていますか?
塚田さん:
僕は、ISNに入ったからといって必ず英語が話せるようになるとは思っていないんです。
いろいろな親御さんがいると思いますけど、「この学校に入れたから英語がペラペラになる」とか、「絶対にこう育つ」という期待は持っていません。
子どもによって違いますからね。
やる気も違うし、好き嫌いもある。
同じ環境にいても、全員が同じように伸びるわけじゃないと思っています。
だから結果が違ったとしても、それを学校の責任だとは思わないんです。
学校はあくまでサポートする場所であって、100%を担うものではないと思っています。
栗林:
英語教育に対しても、現実的な見方をされているんですね。
塚田さん:
だって日本にいるんですよ。
家に帰れば日本語ですし、周りも日本語を話している。
学校で英語を使う環境があったとしても、英語圏で生活しているわけではないですからね。
もちろん学校の取り組みは素晴らしいと思いますし、子どもたちも成長していると思います。
でも、全員が100点になるわけじゃない。
だから私は、20点でも30点でも前に進んでいけば十分だと思っています。完璧なんて求めていません。
栗林:
ありがとうございます。
最後に、子どもたちに伝えたいことがあれば教えてください。
塚田さん:
失敗を怖がらないでほしいですね。私は、成功より失敗の方が大事だと思っています。
もちろん大人になると失敗して頭を抱えることもありますよ。
でも子どものうちは、どんどん失敗したらいい。
失敗したら、また立ち上がればいいだけですから。
失敗するから学べるし、挑戦するから成長できる。
何もしなければ失敗もしないけれど、それでは何も得られないと思うんです。
だからチャレンジしてほしいですね。
栗林:
私たちも、失敗は学びの一部だと考えています。
塚田さん:
そうですよね。
失敗したことを責め続けると、人は挑戦できなくなってしまう。
でも本当は、挑戦できること自体がありがたいことなんです。
勝負の世界なら結果は出ます。順位もつく。でも大切なのは、その結果に向かって一生懸命やったかどうかなんじゃないかなと思います。
子どもたちには、失敗を恐れずに挑戦し続けてほしいですね。
栗林:
本日はありがとうございました。